公開プレゼンテーションおよび質疑応答の内容をふまえ、審査委員会で厳正に審査を行った結果、以下のとおり決定しました(画像をクリックすると提案内容のスライドをご覧いただけます)。なお、審査員講評を各作品の下に掲載しています。
私の日常に寄り添うまち 東横堀川
CFK・宿坊クリエイティブ
山本琢人(中央復建コンサルタンツ株式会社)、林哲生(同)、須賀佑実子(同)、中村遥(同)、藤崎忍(同)、武内淳(株式会社宿坊クリエイティブ)
この水辺のまちの20年後、東横堀川を中心に東と西、北と南が本当の意味で隔てるものがなくなるような素敵な提案でした。現状を活かしながらタイトルの“日常に寄り添う”というところまで行きつくのは、とても難しい課題だったと思うのですが、提案を聞く中で、何人ものまちの人たちの顔、それも喜ぶ顔が浮かんできました。Zoomでコンペをすることも、視察や提案をまとめるのもとても大変だったと思います。本当にチームの皆様、お疲れ様でした!(廣井)
提案のコンセプトとして、「生活者(=「わたし」)」視点に立った豊かな水辺空間の創出で、歩行者軸の道路と水の回廊の位置づけと現状分析とビジョンが的確に捉えられていて、イラスト表現もより分かりやすく表現されている。また、河川利用の促進とそのスキームについても提案され、占用のためのルールや水辺利用のデザインの統一の必要性と、河川管理者と地元組織との連携のスキームを提案されて内容の現実性も評価出来る。(中野)
自然と、漂い、染まる川。
京都大学大学院景観設計学研究室
萩原啓介、清水康晶、劉暁丹、竹中健起、田中宣安
かつて舟運で栄えた川や、川の水の利用した染物に着目し、それらをモチーフとしたデザインを区間により使い分けています。また、水との接し方が、舟に乗ったり、水面に近づいたり、見下ろしたりと様々、空間の使い方も、広さに応じて変えていくなど、変化に富んでいます。さらに、それらをCG、動画で示して、各区間ごとの整備内容だけでなく、利用のされ方がイメージしやすい、すばらしいプレゼンテーションでした。(福西)
船をモチーフにした現代的な空間造形がとても印象的で、洗練された都会的で開放的な雰囲気が感じられます。シンプルな要素を組み合わせながらも、決して単調にならず、変化に富んだ魅力的な空間が構成されているのが素晴らしいです。本町橋や東横堀川水門など東横堀川特有の要素について、どのように場のデザインに組み込んでいくのかが同時に示されているとなお良かったと思います。周囲のまちとの関係性もより具体的に見てみたいと思いました。(久保田)
東横堀川でつながる人と自然の物語
東京大学景観研究室
児玉創、五三裕太、菊池裕太、杉本達宏、福島秀哉
「グリーンインフラ」は、今後のインフラのあり方についての新たなパラダイムとして、今、大変注目されていますが、それをどのように都市空間に組み込んでいけばよいのかは、まだ技術的、社会的に十分な知見が蓄積されているとはいえません。この提案では、それを「水系インフラ」という面的なものとしてとらえて提案されていたのが素晴らしかったと思います。個々の空間表現が、もっと丁寧に表現されているとさらに良かったと思います。(久保田)
東横堀川を都市空間全体との関係で捉えなおし、新たなオープンスペースネットワークを再構築しようとする意欲的な提案。大小様々なスケールもつ暮らしを支える都市施設を、徹底的な緑化を通してグリーンインフラ化する試みは、今後のまちづくりのベースを考えるうえで示唆的である。この提案だからこそのアクティビティーや、リアリティーのある建設プロセスが加わるとより説得力をもちえる。埋もれがちな都市の地形に注目し水の流れをもデザインする試みも評価したい。(忽那)
やかた路 ~船、舟、艇から繋がる~
WU
中川愛美(奈良女子大学)、原和奏(武庫川女子大学)、森暉理(同)
この地域のことをよく調べられていると感心しました。特に農人橋から南のエリアは川沿いが歩けず、川を身近に感じることが難しいので、提案のようなゆったりとした曲線デザインの素敵なやかた路を歩きながら、舟屋の景色や釣り場で釣りを楽しめると、東横堀川が本当に生活の一部として身近に感じられるだろうなと思います。イラストや縦書きの文字も、この地域の雰囲気にとても良く合っていると思いました。(廣井)
高速道路を従来の地域景観にとってマイナスとの発想から離れ、逆に前向きにやかた船の屋根として捉えた発想が良い。エリア全体にくつろぎと、癒しを意識しながら、エリアテーマを持ち、騒然とした都会の中に商業、住居、オフィスを融合させその中にくつろぎや、癒しを意識したエリア形成にチャレンジしている事が素晴らしい。又エリア内の橋を利活用した、やかた路の発想も独創的で楽しい存在と成る事を想像させる。(成松)
川辺を彩る「和」の道と四つの「器」
大久保尚人(芝浦工業大学大学院)
このエリアの歴史的背景を理解し、和を意識し現代的空間再編と融合させた発想が素晴らしい。世界中で公共空間の利活用や、空間の再編が進む中で、特徴の有る、世界のオンリーワンに挑戦する和をテーマとした再編プランは日本人として重要な部分であり、その点を大いに評価した。各施設の設計にもっと踏み込んだ「和」のデザインや精神の浸透が演出されると、小職としては更に嬉しい提案で有った。(成松)
水辺の魅力を、骨格、風景、自然、そして、多様な活動という、スケールに合わせた戦略をもとに、具体的な戦術が丁寧に提案されている。立場の違う人々が協働しながら、徐々に進めていくまちづくりのあり方は、実社会でも展開できるものが提示されている。デザインにおいては、もう一度日本の自然と付き合う作法のようなものを、現代的な視点で再構築している。全体風景とのつながりの表現を強化してほしいが、都市河川の水際における建築の可能性に示唆を与えている。(忽那)
瓦が紡ぐ水平線
鈴木滉一(神戸大学大学院)
歴史から紐解き、現代に残る象徴的な大阪城から導き出した「瓦」という素材。それをモチーフに、徹底的な水辺空間のデザインに反映させようとする潔さが、大胆な空間性を獲得することに功を奏している。また、先人たちが取り組んできた水質浄化によって、水辺活動が生み出されてきたことを、さらに発展させて「瓦」のもつ浄化機能と合わせて展開していることが成功している。「瓦」が持つより多くの性質を理解し、まちづくり全体に広げていく工夫につなげてほしい。(忽那)
水質浄化に地域ゆかりの“瓦”という素材をつかう発想が面白いと思いました。提案では、瓦の奥深さや素材としての可能性が、絵本のようなやわらかな世界観で語られ、一気に引き込まれました。現在の水辺のまちの風景が、20年後にこんな素敵な水辺とまちの風景を作っていけたら、きっとたくさんの笑顔につながるんだろうと思います。水質浄化にまちの人のかかわりが見える提案、素晴らしかったです。(廣井)
よこっかわメトロ
岐阜大学大学院自然科学技術研究科環境社会基盤工学専攻都市・景観研究室
山田幸長、鍵谷哲志
本内容は、対象地域を幅広くとらえ蓄積されてきた社会基盤施設を公共が持つ空間的資源と考え、高速道路の躯体と共存して地域を縦断する自転車動線を整備する提案など総括的で空間設計も優れている。また、新しい概念である「MaaS」の提案など都市内モビリティを提案する先駆的な内容を含んである。さらに「PFI」について具体的なスキーム提案など現実性を感じさせ、ICTを活用したスマートシティへの発展性を感じさせる。(中野)
東横堀川の空間を活かした自転車道の整備に留まらず、自転車道から周辺道路や中之島への接続、周辺エリアでの自転車ポートの設置、さらにその先の地下鉄・バスや船などの他の交通機関との連携に着目されています。また、その運営・収益の仕組みや運営する主体、それによる広い範囲の周辺地域の活性化にも言及されています。このように東横堀川を都市部の交通体系の一部に位置付けた視点が新鮮でした。(福西)
はみ出しあいこの川っぷち
金沢美怜(京都工芸繊維大学大学院)
川の護岸と建物間のさびれた空間の利活用の発想は現実的で面白いと思う。都心の子供たちが自然と触れ合う遊びの場が無くなる中、親水性のビオトープ空間を創造する発想は価値観の有る提言である。(成松)
スジとカラ -小さなインフラと自治の器のコラボレーション-
ヤマオリ
長澤歩(早稲田大学)、西田賢生(同)、結城拓海(同)、夕田潤(同)
水辺空間を、都市構造の連続性を高める要素と、市民の主体的な活動が育まれる場所とに分けて計画。それらをつなぎとめていくアクティビティと仕組みによって新たな公共性を獲得しようとする視点が評価される。(忽那)
都市を結ぶ「オビ」、対岸を留める「ボタン」 -移動と滞在がつくる舞台-
井口直士(東京大学大学院)
本内容は人々の移動を「オビ」と滞留の「ボタン」と捉えユニークなものである。この2つの相互作用で周辺のショップ店舗や利用する人を巻き込み、ユーザビリティとしての賑わいの概念をとらえ直した点が斬新である。(中野)
ぷかぷかマルシェin大阪
親水工学研究室b
植松百花(日本大学)、蛇子明日香(同)、小田瑞葵(同)、宮下健太朗(同)
川にぷかぷか浮かぶお店が並び、遊歩道からだけでなく、ボートでもお店を訪ねることができる楽しそうな提案です。使われているイラストも明るく楽しく、提案の雰囲気をうまく表現したものとなっていました。(福西)
都市の波
百八百九
西那巳子(早稲田大学)、二上匠太郎(同)
都市空間を様々な波長の波の重ね合わせとしてとらえ、まるでフーリエ展開するかのように空間を解釈した意欲的な提案です。ビジュアルもファンタジックで未来的ですが、概念の具現化が直截的に過ぎ、実空間への翻訳にさらなる工夫が必要と感じられました。(久保田)
RIVERROOF
TeamKIH
古城偉央理(神奈川大学)、飯塚ちひろ(同)、二見陸(同)
東横堀川といえば高速の高架。その高架下が河川全体の照明計画でこんなに素敵になるんだと、とてもワクワクしました。こんな灯の水辺のまちをずっとずっと歩きたいです!(廣井)
2次審査の結果発表及び表彰式を以下のとおり開催することとなりました。どなたでもご視聴いただけます。
日時:2020年9月19日(土)、15:00~15:30
視聴URL: https://youtu.be/-fE933WCjGk
1次審査通過者7組による公開プレゼンテーション(YouTube Liveによる同時配信)を下記のとおり実施いたします。どなたでも視聴いただけます。
日付:2020年9月19日(土)
視聴URL:https://youtu.be/KkpodrSgChs
9:50~9:55 | 開会のあいさつ |
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10:00~12:00 | 公開プレゼンテーション及び質疑応答(7作品) 1. やかた路 ~船、舟、艇から繋がる~ 2. 私の日常に寄り添うまち 東横堀川 3. 自然と、漂い、染まる川。 4. よこっかわメトロ 5. 東横堀川でつながる人と自然の物語 6. 川辺を彩る「和」の道と四つの「器」 7. 瓦が紡ぐ水平線 |
12:00~12:10 | 審査員講評 |
12:10 | 閉会 |
※多少の時間の前後があり得ます。予めご了承ください。
審査委員会をZoomで開催(非公開)し、下記7作品を1次審査通過とすることに決定しました。
(整理番号:応募タイトル)※参加登録順
0007:東横堀川でつながる人と自然の物語
0023:私の日常に寄り添うまち 東横堀川
0032:自然と、漂い、染まる川。
0038:やかた路 ~船、舟、艇から繋がる~
0040:川辺を彩る「和」の道と四つの「器」
0047:瓦が紡ぐ水平線
0060:よこっかわメトロ
なお、選外となった提案の中にも優れた検討や斬新なアイデアの作品が多く、それらのなかから、各審査員が推薦したい提案に審査員特別賞を授与させていただくこととなりました。審査員特別賞には賞金はご用意できませんが、講評とともに表彰状をお贈りいたします。審査員特別賞の発表は2次審査会(公開プレゼンテーション)の当日に行います。
今年、コロナ禍により、わたしたちが暮らす社会の風景は大きく変わりました。わが国の将来を担うべき大学生や大学院生、高専生をはじめ、若い社会人の方々にとっても、さまざまなストレスや不安、収入減少などに加えて、若者にとってきわめて重要な成?の機会が大きく奪われている状況が生じています。
そこで、未来ある若者たちに、今だからこそ考え、今だからこそできる活動に、積極的に取り組んでいただき、個々の成?につなげていって欲しいとの願いから、国民一人ひとりの日常の暮らしに直結する都市空間のあり方について提案するアイデアデザインコンペティション「Zoom de コンペ!」を企画しました。このコンペは、チーム作りから、チーム内での議論、デザイン案の作成、提案発表まで、すべて3密を回避して在宅等で行えるよう、インターネット技術を最大限に活用して実施するものです。審査時のプレゼンテーションは、今ビジネスや教育の現場で活用が拡がっている「Zoom」を用いて実施します。今回のコンペは、これまでの一般的なデザインコンペを、ただ単にオンラインで実施するというものではありません。オンラインだからこそできること、その可能性を最大限に引き出し、デザインコンペの実施の仕方そのものにも挑戦してみたいと思います。コロナ禍による社会の激変を経験したことで、これからの都市空間のあり方についても、新たな課題や気づきが見えてきた人もおられるかもしれません。そのような新たな問題意識とともに、これからの都市像を描いていただきたいと思います。
対象地に選定した東横堀川は、人々が密集しがちな都心部にありながら、繁華街の賑わいから離れ、静かで落ち着いた、人々の日常の暮らしが息づく場所です。大坂城の西惣構堀という古い歴史をもちながら、いつも地域の暮らしに寄り添ってきた大切な川であると同時に、現在は、中之島(土佐堀川・堂島川)、木津川、道頓堀川とともに、「大阪『水の回廊』」として、この地域のみならず、大阪のまちづくり全体にとっても非常に重要な場所となっています。その一方、あともう少し工夫をすれば、もっと魅力を引き出せるのではないか、という秘めた可能性を感じさせる場所でもあります。
ぜひ、この東横堀川を題材に、これからの都市空間や水辺空間の新しいデザインについて、豊かな発想でご提案ください。
※本コンペは、デザインのアイデアを広く募集し、今後の都市空間や水辺空間のあるべき姿や可能性を考えることを目的としたものであり、提案内容の直接的な実現を前提とするものではありません。今後のまちづくりへのヒントとして活用させていただきます。
どなたでも応募できます。個人、グループ、国籍、年齢、保有資格など一切問いません。
項目 | 時期 |
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募集要項公表 | 2020年6月26日(金) |
質問受付期間 | 2020年6月26日(金)~2020年7月20日(月) |
質問回答公表 | 2020年7月27日(月)頃まで |
参加登録期間 | 2020年6月26日(金)~2020年8月7日(金) |
提案提出期間 | 2020年8月3日(月)~2020年8月31日(月)20:00厳守 |
1次審査結果の発表 | 2020年9月9日(水) |
2次審査結果の発表 | 2020年9月19日(土)(YouTube Liveにて配信) 2020年9月30日(水)(ウェブサイトに掲載) |
表彰式 | 2020年9月19日(土)(YouTube Liveにて配信) |
審査員(50音順) | 所属・役職等 |
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忽那 裕樹 | 株式会社 E-DESIGN 代表取締役 |
久保田 善明(副委員長) | 富山大学 教授 |
中野 雅弘(委員長) | 元 大阪産業大学 教授 |
成松 孝 | NPO法人 御堂筋・長堀21世紀の会 理事長 |
廣井 真由美 | 東横堀川水辺再生協議会(e-よこ会)事務局長 |
福西 博 | 大阪市建設局道路部長 |
質問の受付は終了しました。回答は以下よりご覧ください。
参加登録の受付は終了しました。多くのご登録をありがとうございました。
参加登録いただいた代表者の方に、別途提案資料の提出先をお知らせします。 その際、Googleドライブを用いるため、Googleアカウントを作成いただく必要があります。参加登録フォームに記載していますのでご確認ください。
受講証明書が必要な方は、必ず以下より事前申込をお願いします。
http://committees.jsce.or.jp/cmc1201/node/7
そのうえで、受講後にアンケートにご回答ください。
本コンペは、土木学会継続教育(CPD)プログラムに認定されています。土木学会の規定に基づき、申請により、以下のCPD単位が付与されます。
土木学会以外の他団体に単位申請される際には、他団体のルールに従ってください(オンライン講習会となったことで単位の在り方や参加管理方法が異なることが確認されております)。
※公開プレゼンテーションは、YouTube Liveにて一般公開(中継)します。中継の途中にアンケート(記名式)のURLを表示しますので、中継終了後3日以内(2020年9月22日(火)まで)にURLにアクセスいただき、アンケートにご回答ください。回答者に受講証明書をお送りします。
本コンペの実行委員会は、土木学会関西支部 大阪「水の回廊」を活かした都市再生調査・研究委員会(活動期間:2018年4月~2020年3月)の活動をもとに組織されたものです。
事務局:〒930-8555 富山市五福3190 富山大学都市デザイン学部 設計マネジメント研究室内
国土交通省近畿地方整備局、大阪府、大阪市、(一社)建設コンサルタンツ協会近畿支部
マップに立てられた「ピン」をクリックすると、そのポイントから撮影した写真をご覧いただけます。Google Mapのストリートビュー機能などと併用して、現地の状況把握に役立ててください。
参加登録いただいた代表者の方に、別途ダウンロード先をお知らせします。その際、Googleドライブを用いるため、Googleアカウントを作成いただく必要があります。参加登録フォームに記載していますのでご確認ください。
現地写真 | Mapで閲覧できる現地写真のオリジナルデータです。著作権フリーとしますので、現地の把握や提案資料の作成等、ご自由に活用してください。加工していただいても構いません。ただし、本コンペ用に撮影されたものではありませんので、活用面でのご不満につきましては何卒ご容赦ください。 |
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高架橋概形図 | 上空の阪神高速の高架のPDF図面です。本コンペ以外の目的では使用しないようにご注意ください。 |
東横堀川の様子を知るためには、以下のようなサイトも参考にしてください。